超小型電気自動車

平成29年1月3日(火)

富山新聞に研究・開発中のTORiCLE Zeroが紹介されました.

TORiCLE

開発用試作車 TORiCLE Zero

名前の由来

Toyama Robot Intelligence Research and Development Cycle

強引なネーミングですが,富山においてロボットを使って研究・開発における協力の輪を循環させていくためのプロジェクトにしたいという願いを込めています.

TORiにはTri(3)をかけて,「産・学・官」「県立大・AKP・高山自動車」「教員・学生・企業人」等々色々な三角関係を循環(Cycle)させていきたいと思っています.


協力

研究テーマ

ロボットインタラクションのための全天球カメラを用いた接近する危険物推定

近年,自動車にはさまざまなインターフェースが搭載されています.その中でもディスプレイや警告音・案内音声は自動運転中や運転支援中において役立っています.しかし,既存のインターフェースにはメリットとデメリットがあります.例えば,警告音・案内音声は搭乗者に瞬時に危険を伝えることができます.しかし常時発話・警告すると搭乗者は煩わしいと感じ,警告音・案内音声を無視してしまいます.

そこで運転者に常時車両の作動状態を認識できるインタフェースとして車載小型ヒューマノイドロボットを提案しています.ロボットが行うノンバーバルコミュニケーションとして,指差しや,衝突する危険がある物体の方向を向くことができます.これらは,人間と同等の動作で搭乗者に危険の理解を促しており,ロボットの動作自体の意味は搭乗者に委ねています.これにより,運転者がロボットからのインタラクションに感じる煩わしさの軽減ができ,運転者とロボットを用いた車両は走行状況の共有ができると考えています.

ロボットが搭乗者に違和感なく動かすためには,運転者の感覚に基づく指標を用いてインタラクションを行う必要があります.そこで,運転者にとって車両と接近する物体が衝突するという知覚を危険感と定義し,運転者の危険感をモデル化を目指しています.そのために接近離間状態評価指標(KdB) と接近する物体の移動ベクトルを適用し,従来の接近情報よりも運転者の接近感覚に近いロボットインタラクションの生成手法を提案しています.

網膜上での物体の見え方

ロボットによる運転支援(オフライン実験)

視覚情報に基づく旋回感覚のモデル化

 現在,自動運転技術が注目を集めクルマ社会が急速に発展しています.自動運転技術の進歩とともに搭乗者に安全や快安心を提供する車両制御について研究が行われています.そのうちの一つのアプローチとして人間の知覚を定量化することで,人間にとって違和感のない車両制御を目指す研究がなされています.本研究では,旋回時に人間が知覚し運転に利用している感覚情報を旋回感覚と定義しています.この旋回感覚をモデル化し人間が旋回をどのように感じているかを車両システムにフィードバックすることで人間にとって違和感のない車両制御が期待できます.

 この研究では,視覚情報に基づいた旋回感覚について研究をしています.運転者は運転動作をする際に景色の流れをもとに運転動作を決定していると言われています.また,旋回時の運転者の技量を左右する要因として視点の位置が要因の一つであることも報告されています.そこで,旋回時の人間の知覚情報を景色の流れと視点の位置の二つを用いて,人間のように視点位置を基準とした景色の流れを取得することで旋回感覚のモデル化を目指しています.

 視覚情報のモデル化を目指し,車載カメラによる画像から景色の流れを取得・処理するための手法について取り組んでいます.景色の流れを取得する際には,運転者のような視点位置基準のフロー算出手法について提案しました.また,景色の流れを車両制御に応用するために粒子群最適化手法を用いたフローの処理手法について取り組みました.

車載ロボット制御のためのIoTを用いたクラウド連携システム開発 

車両に搭載されたセンサーでは認識不可能な、遠方の情報や予想される状況変化に基づいて車両を制御したり、人に情報を提示するためにはネットワークと接続する必要があります。

2017年度は、研究室が保有している開発車両をコネクテッドカー化するために、TORiCLEをIoTデバイスを搭載してクラウドサービスと接続し、車載ECUとクラウドサービス間で双方向通信を実現するクラウド連携システムを開発しました.また、開発したシステムにおける、それぞれの構成要素間の通信に関するプロトコルや時間同期をとってクラウドサービスに送信する仕組みなどを開発しました。

クラウド連携システムによって,ロボットによる情報提供システムや遠隔操作を実現しました.現状、手軽に調達できるLTEネットワークに接続可能なマイコンキットを使ってシステム構築を行っていますが、次世代の5G通信が待ち遠しく思います。

自動運転車の動作情報を共有するための人型ロボットを用いたインタフェースの開発と検証

世界各国で自動運転の研究開発が行われており、完全自動運転車の実現が間近に迫っています。完全自動運転ではヒューマンエラーを無くすために人からの操作を想定していません。ですが、危険を察知する直感など人の方が優れた能力もあります。完全自動運転においても、人と車が協調することで安全と安心を追求することが大事と考えています。そこで、乗員と自動運転車を繋ぐインタフェースを適切に設計し、システムの動作状況を把握できるようにすることが課題です。本研究では、インタフェースとして運転者のような振る舞いをする人型ロボットを提案し,開発と検証を行いました。

まず、自動運転車に搭載された人型ロボットが乗員へ与える影響を調査するためにMATLABとUnreal Engine4を用いたドライビングシミュレータと人型ロボットのSotaが連動したシステムの構築を行いました。シミュレータでは、自動運転によって障害物や歩行者を回避するようにプログラムしています。また、人型ロボットが自動運転車の動きに合わせてハンドルを回すような腕の動きをしたり、周辺を見渡すような顔の動きをします。これにより、人型ロボットが乗員に対して自動運転車が正常に動作することを提示します。

また、実車両に人型ロボットを搭載し、ロボットモーションの生成を検証しました。本研究室が所有する超小型電気自動車にSotaを搭載し、実際に大学の敷地内で自動運転を行いました。右下の写真は、自動運転で障害物に見立てた赤版を回避するときにSotaが赤版に注目している様子です。これからは実環境においても人型ロボットが自動運転車の乗員へ与える影響を調査する予定です。

今後、完全自動運転導入期に突入するとされる交通社会において、本研究が自動運転車と人の適切な関係性を構築するための一助となると期待しています。

旋回感覚モデルを用いた車両制御システムの開発

現在,自動車業界では,自動運転技術の実用化に向けた研究・開発が急速に進んでいます.自動運転技術の実用化に向けて,自動車の物理的な安全だけではなく,搭乗者に違和感や不安感を抱かない車両制御の実現が求められます.そういった研究のアプローチの一例として,人が先行車両に対して知覚する接近度合いをモデル化し,先行車両との追従制御に応用されている取り組みがあります.本研究では,車両の旋回時において,人が知覚し運転時に利用している感覚情報を旋回感覚と定義し,旋回感覚のモデル化を行ってきました.

先行研究では,最終的にカメラ等で車線境界線のオプティカルフローを算出することを目指し,旋回感覚のモデル化を行ってきました.オプティカルフローとは人の網膜上に投影される光の流れのことを指します.本研究では,旋回感覚モデルを用いて車両制御システムの開発を行いました.本システムは,ステップごとに適当なヨーレートの範囲で旋回感覚モデルの出力値を全探索し,旋回感覚モデルの出力値が最適なヨーレートを出力する最適化手法を用いました.

最終的には本研究で開発した車両制御システムを当研究室が保有する超小型電気自動車に搭載して走行実験を行います.この研究を通して,自動運転の旋回時において搭乗者が違和感や不安感を抱かない車両制御システムの実現を目指します.